「私は会社の何に貢献しているのか?」〜組織の持続的な成長のために経営者がすべきこと〜

 

こんにちは。パーパス・ブランディング・コンサルタントの小西です。
突然ですが、皆さんは、自分が「会社の”何”に貢献しているのか」を自覚しながら仕事をしていらっしゃいますか?

社員は、自分の仕事に「貢献の実感」を持てているか。

それは、組織のエンゲージメントを測る最もシンプルで、本質的な問いかもしれません。
経営者の方であれば、「会社に貢献していると自覚している、高いモチベーションを持って働く従業員がいる」と確信できていらっしゃるでしょうか?

今回は、社員一人ひとりが経営課題を自分事にするための情報共有と、社員のゴール設定における整合性の確認がいかに重要かを、事例も踏まえてお伝えしたいと思います。

 
 

1. 「私はこの会社のここに貢献しています」と言える社員はどれくらいいるか

「自分はこの会社の何に貢献しているのか?」

この問いに対して、社員が自信を持って答えられる組織は、実はそれほど多くありません。
これは、私がサポートする中で経営者や現場のマネージャーと話すなかで強く感じていることです。

一方で、企業の持続的な成長には、社員一人ひとりの“貢献感”が欠かせません。自分の役割に納得し、手応えを持てている状態は、パフォーマンスを高め、企業の成長を加速させます。

 

2. 「アロケマン症候群」目的を見失った仕事が増えていないか

先日、私の広報顧問を務めているアプリマーケティング会社の社長が、こんな話をしてくれました。

 

「会社のKGI(*1)から逆算してゴールを設定できているマーケティング関連の社員は、実はそれほど多くない」

「“アロケマン”が多すぎるんです」

 

“アロケマン”とは、マーケティング予算の配分(アロケーション)が仕事の目的化してしまっている人のことです。
本来は「顧客に価値を届け、売上を最大化する」ために行うはずの予算配分が、単なる“作業”に変わってしまっている。
このような状況は、業界を問わず起きているのではないでしょうか。目的を見失い、「行動自体が目的になる」組織は、必ずどこかで機能不全に陥ります。

さらに社長は、

「アロケートするチャネルも大事だが、その会社のKGIから逆算したチャネルごとの分析、チャネルの中のKGIに合わせた戦略っていうものがあってもいいんじゃないか?」
「“KGIのここに貢献できた”ということをどこまで深掘りするかをKPI(*2)として立てられていると、KGIに効くようなゴール設定になっていきますよね?」

と、正しいゴール設定と、チームがその達成に手応えを感じるような、整合性のあるKPIが大事だと話されていました。こちらの記事もご参照ください。
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/02612/?i_cid=nbpnxr_top_new_T

チームのKPIが会社のKGIにどう効いてくるのかが実感できるゴール設定、つまり整合性がとれていることは、組織や企業の成長の要である、社員一人ひとりのモチベーションに影響します。

 

*1:KGI(Key Goal Indicator, 企業や組織が目指す最終的な目標)
*2:KPI(Key Performance Indicator, KGI達成のためのプロセスを定量的に評価する指標)

 

3. ゴール設定は“自分ごと”でなければ意味がない

やはり、会社の社員一人ひとりが、自分の部署のゴール、KPIに対して、「自分はどう深掘りしていけば、部署のKPIに貢献できて、それが会社のKGIに効いてくるのか」が明瞭でなければ、せっかく、やる気がある人材が入ってきても、なかなか経営陣が思うように動いてくれるようにはならないでしょう。

パーパス経営を実践している企業なら、なおさら、そのパーパスに共感して働いている社員にとって、整合性を感じられないゴール設定になっているとモチベーションが低下してしまいかねません。

では、どうすれば社員が目的意識を持ち、日々の業務に意味を感じられるのでしょうか。
それは、まず経営陣が行うこととして次の2つが挙げられます。

  1. 正しいゴール設定(KGIやKPI)を作ること。

  2. 情報共有を積極的にしていくこと。

会社のトップが、まずKGI、会社が目指していることから、現状とのギャップ、社員に何を期待するのかを社員に発信することが重要です。そして、部門長といったマネージャー職の方々が、そのKGIに対して”逆算”した正しいKPIを突き詰めていくことです。正しいゴール設定(KPI)をしっかりと作っていくと、社員は自分ごととして動けるようになります。

 

4. 経営課題を”自分ごと”にするための情報共有

社員が経営課題を自分ごととして捉えるためには、情報共有の在り方も重要です。経営者が抱える課題や会社の方向性を、どこまで社員に共有していますか?

 

4-1 ゴール設定をした後に大事なこと

正しいゴール設定(チームの大きなKPI)ができると、チーム内のメンバー個々に与えられたKPIを追っていくことになります。その追っていく頻度は月ごとに設定している企業が多いようです。毎月でもいいのですが、筆者のお勧めは毎週です。毎月だと、その間に機会ロスが生じやすくなるからです。できるだけ頻度よく、マネージャーは1on1などで確認していくと良いでしょう。

 

4-2 アマゾンジャパンのケース

アマゾンでは全部署がKPI,いわゆる数値目標を持っています。筆者が在籍していた広報も、その他人事や総務のようなバックオフィスも全員、仕事の指標を数値化しているので、皆がその数字を追っていきます。
追っていくなかで難局に直面することも当然あります。広報であれば、例えば、とあるメディアにアプローチしようにも、相手が電話に出てくれないなど、日々色々な壁が立ち塞がるわけです。
そんなときアマゾンでは、まず上司と話し合います。上司との話し合いでは、「じゃあ他にどんなやり方が考えられるのかな?」とか、「じゃあこういうことも試してみた?」みたいな、建設的なコミュニケーションが行われます。そうすると、「来週は別の方法を一回試してみましょう」というような光明を見出すきっかけを作ることができます。

アマゾンでは1on1だけでなく、チームミーティングにおいても、必ず情報共有が行われます。チーム内の誰かが課題を抱えていることが共有され、別の誰かが、「実は自分も似たような体験をしたことがあって、こんな風にやり方を変えてみたら少し反応が出てくるようになった」というようなコミュニケーションをしていきながら、皆でその進捗を共有してサポートし合うことができます。

 

5. マネージャーがすべき重要な仕事

もちろん本人が頑張ることが大前提ですが、自分だけで完結できなくても必ずマネージャーなり同僚なり、皆がサポートし合えるような環境になっていれば、孤独になりません。一人で悩んでしまって、誰にも話せずにいるうちに体調を崩し、会社を休むようになり、それが原因で退職を考えるようになってしまっては会社の損失は大きいでしょう。

そんなとき、マネージャーが察知することが非常に重要です。察知したら、「あれ?なんか疲れている感じだけど、残業結構したの?」といったコミュニケーションが大切です。
自分のチームのメンバーが悩んでいるとか、落ち込んでいることすら気づかずに、「なぜ数字を達成できないんだ?」ときつい追求ばかりしてしまうようでは、人材を失ってしまう悪循環に陥ることになりかねません。

マネージャーがすべき仕事の一つは、チームメンバーがそれぞれKPIを達成できるよう、コミュニケーションを丁寧に行い、コーチングしたり成長のサポートをすることです。

 

6. 「貢献感」が強い組織は、強い

社員がチームの中で一員として尊重されている、頼られていると感じられること。また、チームメンバーそれぞれが助けてあげたいと思われている関係性になっていることは、強い組織において非常に重要です。一言で言えばそれは「心理的安全性の確保」といえます。

自分の居場所、安心して思いっ切りチャレンジできる職場環境が成長する組織にはあります。「うちは上場してるから、この職制以下の人には情報提供できないんだよな」という会社もあると思いますが、極力、情報提供をした方が、社員のモチベーションにつながり、強い組織に成長していくでしょう。

 

以上をまとめると、社員が自分の仕事に誇りと主体意識を持つためポイントは以下となります。

  • 経営者が経営課題や会社の方向性を積極的に共有する。

  • マネージャーは社員のゴール設定が会社のKGIと整合するようにサポートする。

  • さらに社員が自分の役割や目的を理解し、自信を持てるように導く。

企業が持続的に成長し続けるためには、パーパス(存在意義)やKGIを掲げるだけでは不十分です。
社員一人ひとりが、「自分はこのパーパスにどう貢献しているのか」を理解し、行動と結びつけていく必要があります。

「私はここに貢献しています」と、誇りを持って言える社員がどれだけいるか。

これは、組織の健全性を示す“見えない指標”です。
経営者として、ぜひ一度立ち止まって問い直してみてください。
貴社の社員は、自分の仕事に誇りを持てているでしょうか?

 

「実際にどうやってやるの?」と思われた方は、様々な方法がございますので、是非お気軽にご相談ください。AStoryでは、企業のパーパス経営を実現する広報・PR活動を支援しています。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

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