社員が“自ら動く組織”を作るには?アマゾンで学んだ挑戦を促す「行動指針」の力

 

こんにちは。パーパス・ブランディング・コンサルタントの小西です。

「うちの社員、もっと自発的に動いてくれたら…」「挑戦する空気がなかなか根づかない」――こうした声を、私はこれまで多くの経営者の方々から伺ってきました。

かつてアマゾン・ジャパンの広報本部長として、そして今はパーパス・ブランディングのコンサルタントとして、中小企業の組織づくりのご依頼も支援している筆者ですが、「社員の自主性や挑戦を促す仕組み」として特に重要だと感じているのが、行動指針(行動の基準)の設計とその“浸透のさせ方”です。

この記事では、アマゾン時代の筆者の経験をもとに、「どうすれば社員が自ら考え、動く組織がつくれるのか?」という問いに対する実践的なヒントをお届けします。

 
 

自主性が育つ組織には「全員がリーダー」という前提がある

アマゾンでは、新卒でも中途でも入社初日からこう言われます。

 

「あなたはアマゾンのリーダーです。自覚を持って働いてください」

 

アマゾンにおける“リーダー”とは、役職や経験の有無ではなく、「リーダーシップを発揮する人」のこと。リーダーシップは誰でも磨ける“スキル”としてアマゾンでは捉えられていて、すべての社員が実践することを求められます。

この前提があるからこそ、社員一人ひとりが自分ごととして意思決定し、主体的に動く土壌が育つのです。

 

リーダーとマネージャーの違い

ちなみに、「リーダーとマネージャーの違い」についてよく質問を受けますが、マネージャーには以下の2つの役割があります。

 

①    部下やチームの正しいゴール設定をする

②    部下やチームメンバーの力を最大限に発揮させる環境作りなど、ゴール達成に向けたサポートをする

 

アマゾンでは全員、自分も、自分のチームメンバーも全員リーダーなので、各リーダーがリーダーシップを発揮できるような環境を作ってサポートしていくのがマネージャーとなります。

 

リーダーシップを発揮する仕組みとは

それでは、リーダーシップスキルを発揮するためにアマゾンでは何をしているのでしょうか?

 

「行動指針×評価制度」でリーダーシップを日常に落とし込む

アマゾンには「Our Leadership Principles(OLP)」という、16項目からなる行動指針があります。
これは単なるスローガンではなく、人事評価に直結する実践的な基準になっています。評価は、売上などの「管理目標」だけでなく、「どれだけリーダーシップを発揮したか(行動目標)」も重要視されています。つまり、成果を出すだけでなく、いかにリーダーシップを発揮したかが問われるのです。

アマゾンの社員は両方できないとダメ。売上だけ目標を達成しても、自分のことしか考えず、まったくリーダーシップを発揮できていない場合は評価されません。逆も然りです。

もちろん管理目標を達成することは大事なのですが、筆者の在籍時は、行動目標を達成できることの方に比重が置かれていた印象です。

こうした制度があるからこそ、社員は常に高い視座と責任感を持って行動するようになります。

OLP一覧はこちら(アマゾン公式サイト)https://www.amazon.jobs/content/jp/our-workplace/leadership-principles

 

社員の自主性やチャレンジを促すアマゾンの行動指針

筆者が特に有効だと実感したアマゾンの行動指針(OLP)を抜粋してご紹介します。

 

● Insist on the Highest Standards(常に高い目標を掲げる)

リーダーは常に高い水準が継続的に求められます。チームがより品質の高い商品やサービス、プロセスを実現できるように推進します。問題が起きたとき、どう再発防止策を徹底するか?という姿勢が求められます。

 

● Think Big(広い視野で考える)

筆者がアマゾンの広報時代に、まさに「Think Big」を実感したエピソードがあります。
あるPRイベントのプランと予算案を社長に出したとき、こんな質問をされました。

 

「これは、本当にThink Big?」

 

つまり、限られた予算の中でプランしたのですが、まずThink Big精神であるべき理想の姿を描き、そこから逆算してリソースをどう確保できるか考えろという質問です。当然「こんなBigなことをやりたいので予算ください」ではダメ。ありとあらゆるAmazonの強み(人、ネットワーク、仕組みなど)を生かし、お金で解決しなくても実現する方法を考えなければなりません。

アマゾンのOLPの中には「Frugality」(質素倹約)という項目もあり、「倹約の精神は創意工夫、自立心、発明を育む源になる。」という考え方があります。Think BigとともにFrugalityも忘れてはいけません。そうして“両方”を模索した結果、アマゾンというプラットフォームの強みをメリットとして捉えていただけるパートナーのニーズと調和したWin-Winを生むイベントが実現しました。至難の業でしたが、それを実現できた時の達成感や成長への手応えは大変嬉しい経験でした。

 

● Bias for Action(とにかく行動する)

アマゾンでは「トライアンドエラーを高速で回す」ことが徹底されていました。完璧主義より、素早く行動して改善を繰り返す。その中で、自ら意思決定をする場面が何度もあります。慎重に調査して、熟慮して、時間をかけて、というアプローチは、アマゾン的にはNOであり、とにかく失敗を恐れずチャレンジすることを求められます。
その代わり、リスクも計算して行動することも意識します。アマゾンではリスクに直面するたびにプロジェクトを磨き続けるというサイクルになっていくという考え方なのです。

アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏も、よく私たちに「失敗と成功は双子」だといっていました。要は、成功には失敗がつきもの、失敗がなければ成功がないと。行動指針に沿って行動していても、失敗することはあります。

一方で、ジェフ・ベゾスは失敗を2種類に分けて考えられており、1つ目は、自分の専門分野で実行に失敗することですが、これは認められません。2つ目は、新しいアイデアや新しい方法を探求しているときに起きるものですが、これはイノベーションに欠かせないことなので、そこでの失敗は想定内のものとして受け入れられます。

2つ目の失敗から学んで、早く軌道修正し仕組み化していく。これがAmazonのカルチャーでした。

 

● Invent and Simplify(創造と単純化)

2017年に日本に導入されたAmazon Prime。サブスクリプションという消費スタイルは日本ではまだ馴染みがなかったため、ジェフ・ベゾス氏が当時、「使いたい放題のプログラムを作りました!」と説明しても、皆、「へー、そういうニーズあるんだ…」と、ピンときていませんでした。しかしながら、サブスクサービスが日本のお客様にとって便利になると想像し、信じて動いた結果、今やサブスクサービスが当たり前のように社会に浸透するまで成長したのです。新しいアイデアを実行に移す時、長期間にわたり、外部の理解を得ることができない可能性があることも受け入れるというInvent and Simplifyの考え方です。

 

このように、皆さんの会社にもある行動指針をベースに、働く環境や人事評価、さらには商品やサービスを作っていくことは、その会社のパーパスを確固たるものとして社内外に認知、浸透させていくためにも大切なのです。

 

行動指針は“会社のパーパス”と人をつなぐ実践ツール

OLPは、アマゾンのパーパス――「地球上で最もお客様を大切にする企業になる」――を社員一人ひとりが日々の業務で体現するための、強力な理念や共通言語になっています。行動指針はウェブサイトに載せておくだけの文言でではなく、会社のパーパス(存在意義)の達成に向けて社員が業務の中で日々意識すべきものなのです。

様々な企業で会社員を経験した筆者としては、これだけの行動指針を、しっかりとベースにして実際に自身の行動を改善するよう求められた経験がほかになく、起業した今でも、その当時の経験は自身のクライアントワークでも自然と意識できるようになっています。

アマゾン出身の起業家も、このOLPを活かしている人複数います。この仕組みは、規模に関係なく、どんな企業にも取り入れることができます。筆者自身、AStoryとしてさまざまな企業のパーパス策定・浸透支援をしてきた中で、「行動指針をつくること」以上に「社員の行動と結びつけること」が成功の鍵だと痛感しています。

 

社員の挑戦を引き出す行動指針、つくれていますか?

社員が自ら動く組織には、土台となる「行動指針」と「評価制度」の一貫性があります。そして、その根底には、企業としてのパーパスがしっかりと流れています。

もし、

行動指針はあるけれど、社内に浸透していない

評価制度が形骸化している

社員の自主性や挑戦を促す行動指針(MVV・パーパス)を作りたい

こうした課題を感じていらっしゃる方は、ぜひ一度AStoryにご相談ください。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。