メディアモニタリングはPR測定ではない理由― 海外記事から考える「PRの成果」の本当の見方
こんにちは。パーパス・ブランディング・コンサルタントの小西です。
今回はPRに関する海外の記事をご紹介したいと思います。
「Why Media Monitoring is Not PR Measurement (And Why They are Often Confused)」*1
(メディアモニタリングはPR測定ではない ― なぜこの2つは混同されるのか)
実際の現場ではこの2つ、「メディアモニタリング」と「PR測定」が混同されているケースが多いと思います。
私自身のコンサルティング経験から見ても、「まさにその通りだな」と思う内容でした。
今回は、この海外記事をきっかけに、PRの成果をどう考えるべきかについて少し考えてみたいと思います。
メディアモニタリングとは何か
多くの企業が行っているのが、いわゆるメディアモニタリングです。
例えば、
新聞や雑誌への掲載
テレビやラジオでの露出
オンラインメディアの記事
SNSでの言及
掲載媒体の数やインプレッション
記事のトーン分析
こうした情報を集め、クリッピングとして記録する。
これはPR活動において非常に重要な作業です。
海外記事でも、メディアモニタリングは
「何が、どこで、誰によって語られたかを把握する活動」
と定義されています。つまり、これは事実(ファクト)の記録です。
PR活動の結果として、どの媒体に掲載されたのか。どのような形で言及されたのか。
それを可視化することは、もちろん価値があります。
特に、危機管理の場面ではメディアモニタリングは欠かせません。
ネガティブな報道が広がっていないか、初期段階で把握することができるからです。
ただし、ここで重要なポイントがあります。それは、
メディアモニタリングはPRの「成果」そのものではない
ということです。
「露出=成果」になってしまう問題
PRの現場でよく見かけるのが、
「たくさん掲載された=成功」
という評価の仕方です。
例えば、
日経新聞に掲載された
テレビで紹介された
記事掲載が10件あった
こうした結果は確かに嬉しいものですし、PRのアウトプットとして重要です。
しかし、それだけでは本当の意味でのPR効果はわかりません。
なぜなら、PRの目的は露出そのものではないからです。
本来、PRが目指すのは
認知の変化
理解の促進
ブランドへの信頼
ステークホルダーの意識変化
行動変容
といったアウトカム(結果)です。
つまり、
掲載されたこと(アウトプット)とその影響(アウトカム)は別のもの
なのです。
PRの効果測定とは何か?メディアモニタリングとの違い
PRの効果測定とは、PR活動がどのような影響を社会やステークホルダーに与えたのかを分析することです。
一方、メディアモニタリングは、新聞やオンラインメディア、SNSなどで企業がどのように言及されたかを把握する活動を指します。
両者は密接に関係しますが、本来は役割の異なるものです。
PR測定とは「インパクト」を見ること
海外記事では、PR測定を次のように説明しています。
「PR測定とは、どんなインパクトをもたらしたのかを分析すること。」
例えば、
ブランド認知はどう変化したか
企業への信頼は高まったか
ウェブサイト流入は増えたか
採用応募は増えたか
営業活動に追い風は生まれたか
こうした変化を見ることで、PRの本当の価値が見えてきます。
私自身もPR活動の評価をするときは、
「記事が掲載された」
という事実だけではなく、その記事が何を生んだのかをできるだけ追うようにしています。
例えば、
掲載後のサイトアクセスの変化
事業部への追い風
ステークホルダーからの問い合わせ数
SNSでの反響
などを組み合わせて見ていくと、PRの役割が少しずつ見えてきます。
もちろん、1本の記事がどれだけ長期的に影響したのかを正確に測定するのは簡単ではありません。
それでも、戦略的なPR活動を継続していくと、長期的なブランドイメージの変化が見えてくることがあります。
バルセロナ原則が示すPR評価の考え方
ここで思い出したいのが、PRの世界でよく知られている「バルセロナ原則(Barcelona Principles)」です。
これはPRの効果測定の基本原則を示した国際的なガイドラインで、最新版はバルセロナ原則3.0と呼ばれています。
この原則でも強調されているのは、
PRはアウトカム(成果)で評価されるべき
という考え方です。
つまり、
掲載数
インプレッション
といった数字だけでPRを評価するのではなく、
ステークホルダーとの関係や信頼の変化
を見ることが重要だとされています。
これは、PRの本質が「情報の露出」ではなく「関係性の構築」だからです。
社内でPRの価値を伝えるために
私がコンサルティングしている企業でも、最初は
「テレビに掲載されました」
「新聞に掲載されました」
というクリッピングを大量にまとめたレポートが社内で共有されていることがあります。
もちろん、それ自体に意味がないわけではありません。
しかし、それだけでは社内の人にとって
「それは何の意味があるの」
という疑問が残ります。
だからこそ、
どんな戦略でPRを行い
どんな活動を行い
どんな掲載につながり
それがどんな影響を生んだのか
というストーリーを示すことが重要になります。
そうすることで、
「PRって意味があるんだね」
「この活動は続けた方がいいね」
「もっとPR部門に投資した方が良いね」
などという建設的な社内コミュニケーションが生まれていきます。
PRは「意味」をつくる仕事
パーパスブランディングの観点から見ても、PRは単なる露出獲得ではありません。
企業が、
なぜ存在するのか
社会にどんな価値を届けたいのか
どんな未来をつくろうとしているのか
そうした意味(Purpose)を社会と共有していく活動です。
だからこそ、PRの成果も単なる掲載数ではなく、
社会やステークホルダーの意識がどう変わったのか
で考える必要があります。
メディアモニタリングは、そのための重要な材料です。
しかし、それはあくまでスタート地点。
そこから
どんなインパクトが生まれたのか
を考えることこそが、PRの本質なのだと思います。
PRの成果を「掲載数」だけで評価してしまうと、本来見えてくるはずの価値が見えなくなってしまいます。
企業が社会とどのような関係を築き、どのように信頼を積み重ねていくのか。
そのプロセスこそが、PRの本質です。
そして、その中心にあるのが「パーパス」です。
関連記事「パーパスブランディングとは何か」
企業が何のために存在し、どんな価値を社会に届けようとしているのか。
その意味が明確になるほど、PRは単なる露出活動ではなく、企業の信頼資産を育てるコミュニケーションへと変わっていきます。
AStoryでは以前の記事でも、PRとは「企業と社会が互いに価値を生み出す戦略的コミュニケーションプロセス」であると述べています。
※詳しくは「地方PRこそストーリーを! ~社会の共感を得る広報戦略とは~」でも紹介しています。
もし今、
PR活動をしているが成果の測り方に悩んでいる
掲載実績はあるのに、ブランド価値につながっている実感がない
自社のパーパスを起点にしたコミュニケーションを整理したい
努力しているがPR活動が社内で評価されていない
と感じているのであれば、一度立ち止まってPRの設計を見直してみることも大切かもしれません。
AStoryでは、企業のパーパスを起点に、ブランドストーリーの設計からPR戦略、コミュニケーション設計までを一体で支援しています。
ご興味があれば、ぜひお気軽にご相談ください。
―― 著者情報 ――
小西 みさを
AStory合同会社代表/パーパス・ブランディング・コンサルタント。全省庁統一資格有資格者。
企業広報・ブランドコミュニケーション領域において30年以上の実務経験を持つ。
Amazon広報本部長として日本市場におけるブランド戦略統括や、ソフトバンク、セガなど上場企業での広報・海外広報経験を経て独立。MBA(英ウェールズ大)修了、Oxford Executive Leadership Programme修了。
株式会社NJS社外取締役、ヒューマンライフコード株式会社社外取締役、BS朝日放送番組審議委員、社内報アワード審査員。
【主な講演実績】新経済連盟/静岡銀行/Startup Hub Tokyo/沖縄県経営者協会 ほか多数。
―― AStoryについて ――
AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。
ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
参考・引用元
*1:「Why Media Monitoring is Not PR Measurement (And Why They are Often Confused)」https://instituteforpr.org/why-media-monitoring-is-not-pr-measurement-and-why-they-are-often-confused/