「パーパスはもう古い?」──今こそ問われる、真のパーパス経営とブランディングの実力

会社のパーパスを理解して働いている成長企業の社員たち

こんにちは。パーパス・ブランディング・コンサルタントの小西です。

最近、「パーパスはもう時代遅れでは?」という声を耳にするようになってきました。実際、メディアでも「パーパスウォッシュ(見せかけのパーパス)」への批判や、パーパスの限界を問う論調が見られるようになっています。しかし、それは本当に“パーパス”の限界なのでしょうか。あるいは、“実態と発信”が伴っていない企業の限界なのでしょうか。

本記事では、パーパス・ブランディングを専門とする筆者の視点から、今まさに経営者や広報担当者が考えるべき「パーパス経営の本質」と、それを支えるパーパス・ブランディングの重要性を掘り下げます。

 
 

1.「パーパス経営×パーパスブランディング」の4象限

ここでマーケティング科学アカデミー誌「Journal of the Academy of Marketing Science」で発表された研究結果の記事(*1) で書かれている、企業を4タイプに分類するフレームワークを紹介しましょう。

  1. 利益志向型:パーパスよりも利益の追求を最優先する企業。

  2. 非利益志向の偽装(パーパスウォッシング)型:パーパスの発信に力を入れているが実態が伴っていない企業。

  3. 移行期型:社内で粛々とパーパス経営に取り組んでいるが、発信は控えめな企業。

  4. 深いパーパス型:経営とブランディングの両面からパーパスを実践している企業。

① 利益志向型

利益志向型は本来のパーパスを重視するというよりは、自社の利益が最優先という、利益成長を目指している会社が該当します。この記事では、利益追求だけのアプローチでは、今後ステークホルダーの期待値も変化してきているので、結果的にその会社が望む利益成長は難しくなってきている事を指摘しています。

② 非利益志向の偽装(パーパスウォッシング)型

パーパスを伝えること自体には注力しているのですが、実態が伴ってないパターンです。パーパスについて世の中に発信していても、実際の事業活動に根付いておらず形骸化している企業は多いのではないでしょうか。これは別名「パーパスウォッシング」とも呼ばれています。

③ 移行期型

移行期型はパーパスを実践しているのだけれども、外部へは発信してないパターンです。パーパスを制定するということは、社内の人事評価にも大きく影響することにもなり、様々な準備や試行錯誤も起こります。その渦中などは特に、リスク(パーパスウォッシングと誤解・非難されるなど)を回避するため、社外への情報発信は最小限にしている企業を指しています。

④ 深いパーパス型

4つめは「深いパーパス」です。ディープ・パーパスとも呼ばれていますが、これは、パーパス経営もパーパス・プランディングも両方しっかりやっているパターンです。しっかりと競争優位性も担保しながら、きちんとステークホルダーに価値も創出して努力している会社が該当します。

AStoryが重視するのは、このうち4番目の「深いパーパス型」です。お飾りのように単に理念を掲げるだけでなく、事業戦略・社内文化・社外発信まで一貫してパーパスを貫く企業こそが、真の成長を実現できると信じています。

 

*1出典:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「あなたの会社はパーパスを追求し続けるべきか」https://dhbr.diamond.jp/articles/-/11670

 

2. SONYとバンダイナムコに学ぶ「深いパーパス」の効果

では、「深いパーパス型」の企業は、具体的にどのような成果を出しているのでしょうか。

SONYのパーパス

代表的な例としてSONYが挙げられます。SONYは2019年にパーパスを策定し、それを軸としたグローバルビジネスと一貫性あるコミュニケーションを展開しています。その結果、時価総額はこの10年で約7倍(*2)にまで成長しています。経営者自身がパーパスを語り、全社でブランディングが実行されている好例といえるでしょう。


SONYのパーパス 「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/purpose_and_values/


*2:ソニーグループ時価総額推移 https://irbank.net/6758/cap

バンダイナムコのパーパス

もう一社はバンダイナムコ。2006年の経営統合後、2014年に「Fun for All into the Future」というパーパスを掲げ、社内外のブランド統合を推進しました。その結果、こちらも時価総額が約6倍(*3)にまで上昇。対外的な発信だけではなくインターナルブランディング(社内のパーパス浸透)にも力を入れている企業で「社員が自社のパーパスを語れる状態」が経営の強さを支えていると思います。


バンダイナムコのパーパス 「Fun for All into the Future」https://www.bandainamco.co.jp/about/purpose.html


*3:バンダイナムコHD時価総額推移 https://irbank.net/7832/cap

 

3. もはやブランディングは広報部門だけの仕事ではない

これまで多くの企業では、ブランディングやパーパスの発信は「マーケティングや広報部門など限られた部門の仕事」とされがちでした。しかし今や、パーパス・ブランディングは事業戦略そのものと一体化することが求められています。

ブランディングはマーケや広報の専任領域ではなくなってきています。社員一人ひとりが自社のブランドを背負っているという自覚と、それを語れる力が求められているのです。

つまり、パーパスを「作る」「実行する」「語る」ことを、企業全体で共有できなければ、社会やステークホルダーの共感は得られず、持続的な成長も期待できないということです。

 

4. パーパスは“古い”のではなく、“問われている”

「パーパスは古い」と感じる声が出てきた背景には、見せかけだけのパーパスを掲げた企業が多かったことがあるかもしれません。ですが、パーパスは古いとか新しいとか、そういう問題ではありません。なぜなら、パーパスは企業理念や経営理念と同じで、それは“時代性”ではなく“本質”に関わることだからです。

日本では、明治時代の実業家・渋沢栄一が説いた「論語と算盤」にもあるように、道徳と経済は本来一体のもの。ところが戦後、アメリカの経済学者、ミルトン・フリードマンが提唱した「株主資本主義」によって利益偏重の風潮が強まり、渋沢栄一のいう道徳の概念にもつながるパーパス(企業の存在意義)は忘れられてきました。

その流れが変わりつつあるのが、2019年のアメリカのビジネスラウンドテーブルの提言(*4)。「企業は株主だけでなく、社会の一員としての役割を果たすべき」という考え方が広がり、ようやくパーパスが見直され始めたのです。

 

*4:関連記事「評価される企業が重視していること」https://www.astorypr.com/news-all/case-purpose-what-valued-companies-focus-on

 

5. 「深いパーパス型」企業になるために必要なこと

パーパスを掲げて唱和しているだけでは不十分です。これからの時代に必要なのは、「実行」と「発信」が伴ったパーパス経営と、それを支える全社的なパーパス・ブランディングです。

あなたの会社は、今、どのグループに属しているでしょうか?

  1. 利益追求型

  2. パーパスウォッシング型

  3. 移行期型

  4. 深いパーパス型

もし4番目でなければ、それは成長の大きな機会損失かもしれません。だからこそ、経営とブランディングの両輪でパーパスを再設計し、実行し、発信することが不可欠なのです。

 

6. パーパスを「掲げる」から「生かす」パーパスへ

パーパスとは、単なるスローガンでも、広告コピーでもありません。それは「自社がなぜ存在するのか」を問い、日々の経営判断、社員の行動、社会へのコミュニケーションに一貫して反映させていくことです。

その実行と発信の両軸を持つ企業が「深いパーパス型」へと進化し、持続的成長を実現しています。今こそ、貴社のパーパスが“本物かどうか”が問われています。

「うちもパーパスを掲げているが、社内外に浸透していない」

「理念と経営が結びついていない気がする」

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