企業が「信頼」で世界に勝つには ― 透明性と一貫性が未来を拓く―

オフィスの廊下にいる右手を自分の胸に当てて笑顔の男性

こんにちは。パーパス・ブランディング・コンサルタントの小西です。

突然ですが、貴社は顧客をはじめとするステークホルダーから信頼されていると感じていますか?もしくは、あなたが会社の社員の場合、あなたは会社の経営陣を信頼していますか?

今回は企業の「信頼力」がテーマです。

 
 

日本企業の信頼度は28カ国中27位

PR会社エデルマンが毎年実施・発表している、世界各国の政府、企業といった組織に対する人々の「信頼度」を調査した年次報告書「エデルマン・トラスト・バロメーター 2025」(*1)では、日本の信頼力の低さがあらためて浮き彫りになりました。例えば、「雇用主を信頼する従業員の割合」において、日本は世界28カ国の中で後ろから2番目という結果です。従業員が経営者や組織を信頼できない状況では、エンゲージメントも生産性も上がりませんし、企業が掲げるパーパスも空回りしかねません。

さらに、消費者の72%が「社会的・倫理的な価値観が購買行動に影響する」と回答している一方で、「ブランドが社会的な善に実際に貢献している」と信じている人はわずか46%にとどまっています(*2)。

日本の信頼力が世界的に低いという事実は重くのしかかる一方で、これからの未来を担う若者の価値観に、個人的には日本企業の起死回生のチャンスがあると思っています。

*1:「2025 Edelman Trust Barometer」https://www.edelman.com/jp/expertise

*2:「The Evolution of Purpose-Driven Branding in 2025: From Claims to Measurable Impact」https://www.linkedin.com/pulse/evolution-purpose-driven-branding-2025-from-claims-impact-salvador-2dt2e/

 

信頼が求められる時代背景

まず、なぜ「信頼」がこれほど重要になっているのかを整理したいと思います。

1.     Z世代の価値観
 これから社会を牽引するZ世代は、従来以上に「信頼」や「倫理観」を意識しています。彼らにとって、企業が掲げる理念やパーパスは「飾り」ではなく「行動」と一致しているかどうかが重要です。

2.     企業のESGへのコミットメント
 企業の信頼度は、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)への取り組みとも直結しています。実際、日本経済新聞の報道(*3)によれば、2024年度には国内主要企業の約8割が役員報酬をESG指標に連動させています。トップ自らがESGにコミットする傾向は、信頼力が重要であるという裏返しといえます。

3.     国際的な潮流と日本の立ち位置
 米国ではトランプ政権下でESGに関する数値が低下している一方、日本はむしろチャンスなのではないかと筆者はとらえています。グローバル基準において「信頼」を確立できれば、日本企業は新しい価値創造のフロントランナーになれる可能性がありそうです。

*3:日本経済新聞ESG連動報酬、国内主要企業の8割に ディスコは気候変動対応を重視」※会員限定記事

 

企業は何をすべきか──信頼力を上げる4つの事例

では、企業はどのように信頼を獲得できるのでしょうか。ここでいくつかの事例を紹介します。

1. カゴメ──地域とともに生きるブランド

カゴメ株式会社は「地産全消」や「農園応援」といった取り組みを通じて、地域に根ざした持続可能な活動を実践しています。特に注目したいのは「カゴメトマトジュースPREMIUM」(*4)。パッケージのQRコードを読み込むと、生産者の声や製品ができるまでのストーリーを動画で確認できます。こうした透明性は、消費者に安心感と共感を与え、ブランドへの信頼を強固にします。

*4:「カゴメトマトジュースPREMIUM」 (https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/agricultural-development/03/)

2. ボッテガ・ヴェネタ──本物へのこだわり

ラグジュアリーブランドのボッテガ・ヴェネタは「Craft is Our Language(クラフトは私たちの言語)」というキャンペーン(*5)を展開しました。職人の手仕事に光を当て、本物のこだわりを前面に出した姿勢は、単にセレブリティを使った広告以上の説得力を持ちます。このキャンペーンは自社の商品を買ってもらいたい相手にリーチし、共感してもらえる施策だと思います。「ものづくりの国・日本」にとっても大きな示唆を与える新しい見せ方だと感じました。他ブランドとの差別化の鍵は、ほかにはない「本物感」をいかに伝えるかにあるのだと感じさせます。

*5:「Craft is our Language by Bottega Veneta」https://www.youtube.com/watch?v=U0sb6djcrVE

3. 味の素──パーパスを行動に落とし込む

以前の記事「経営者は必読!人がやる気になる&育つための自社に問うべき質問10」でもご紹介している味の素株式会社は、「Eat Well, Live Well.」というコーポレートスローガンを掲げ、独自のCSVであるASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)を経営戦略に組み込んでいます。社員が日々の商品開発や事業活動のなかでASVを意識し続けることにより、単なるスローガンにとどまらず「生きたパーパス」として機能しています。これは、企業活動と価値観が完全に一致した好例です。

4. 無印良品──一貫性が築く長期的な信頼

1980年の誕生以来、無印良品は「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」といった基本姿勢を貫いています。社会や環境への配慮を一貫して続けてきた結果、同社は単なるブランドを超えて「信頼される生活のパートナー」としての存在感を確立しました。

 

信頼される企業の3つの共通点

これらの事例に共通しているのは次の3点です。

  1. 透明性:取り組みや背景を隠さず公開している。

  2. 一貫性:理念と行動が一致している。

  3. 持続性:短期的なキャンペーンではなく、長期にわたって続けている。

信頼は一朝一夕に築けるものではありません。だからこそ、経営者が率先してコミットし、組織全体がその姿勢を共有することが不可欠です。

 

日本企業が世界で信頼を勝ち取るために

日本企業が「信頼」という無形資産を活かせば、グローバル市場で大きなアドバンテージを得られるはずです。先述の調査結果では日本の信頼力はまだまだ低いかもしれません。しかし、裏を返せば「伸びしろがある」ということです。

これからの時代は、製品やサービスの品質だけでなく、その裏にある「物語」と、発信している情報と実態の「一貫性」が問われます。Z世代の消費者や従業員が重視しているのは、まさにそこなのです。

 

おわりに—信頼をパーパス経営の中核に据えよう

エデルマンの調査が示すように、日本企業にはまだ信頼向上の余地があります。しかし、筆者はそれを「危機」ではなく「機会」ととらえています。透明性を持ち、一貫性を貫き、持続可能な取り組みを行うことで、日本企業は国内外で確かな信頼を勝ち得ることができるはずです。

AStoryでは、パーパスを軸にしたブランディングとコミュニケーションを通じて、企業の「信頼構築」をご支援しています。もし、貴社が「自社の取り組みをもっと伝えたい」「社員や顧客との信頼関係を深めたい」とお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。共に未来を築くための第一歩を踏み出しましょう。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

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