プレスリリースを一段上のレベルに引き上げるボイラープレートとは

 

海外ではプレスリリースに魅力的なボイラープレートを記載している企業が多く、またプレスリリース以外でも「ボイラープレート」を展開させているケースが見受けられます。
一方、日本ではまだまだ「ボイラープレート」の価値に気が付いていないようです。
今回はこの「ボイラープレート」を活用することでプレスリリースを一段上のレベルに引き上げる方法について解説したいと思います。

 
 

ボイラープレートとは

ボイラープレート(Boilerplate)とは、プレスリリースの最後に記載する短い定型文のことです。元々は印刷業界の用語で、新聞などに鉄製のプレートで何度も印刷する、「変更せずに何度も使用できる文章(またはロゴや広告)」という意味で使われていましたが、広報の世界では特にプレスリリースにおいて、読み手に自社のアイデンティティやメッセージを伝える重要な要素になっています。

日本ではボイラープレートというよりも、「私たちについて」や「弊社について」というタイトルで、「代表者名」や「資本金」、「従業員数」など、いわゆる”会社概要”を記載した、そつが無いものの無味乾燥なボイラープレートが多く見受けられ、ボイラープレートの効用を考えると非常に勿体ないなと思います。もちろん、パーパスブランディングにおいても、このボイラープレートが活かせるので是非有効活用していただきたいものです。

 

ボイラープレートのメリット

多角的な事業を展開する大企業によってはボイラープレートを作ること自体のハードルが高いようですが、”会社概要”だけを見ても、同じ業界に多くの競合がいるなかでは、メディアにとって企業の存在意義(パーパス)、ビジョンや強みなどが伝わらず魅力的には感じないものです。

ではボイラープレートのメリットにはどんなものがあるか見ていきましょう。

  1. 一貫性の確保
    自社が伝えたい内容のボイラープレートを作成しておくことで、プレスリリースを発信する度に訴求し続けることができます。ボイラープレートを通じて記者はその企業のパーパスやビジョンなど根源的な情報及び強みや特徴などの情報を簡単に把握することができます。それにより、プレスリリースの発表内容がその企業のボイラープレートの内容と整合性が取れ、その企業が目指すことを新しい施策で努力し続けていることへの理解が面となってより深まり、興味を持たれる可能性が高まります。

  2. ブランドの強化
    作成したボイラープレートはプレスリリース以外にも他のPR素材(ウェブサイト、プレゼン資料、等)や他の部門(営業、人事、等)でも活用すべきです。ボイラープレートは企業の魅力や存在意義を短い言葉で伝えるための貴重なコミュニケーションの素材です。ボイラープレートを通じて企業のパーパスやミッション、ビジョンを明確に伝え企業の個性や強みを強調することで様々な機会を通じて共感が生まれ他社との差別化を図ることができます。

  3. メディアにリーチする手段
    記者は常に忙しく短期間で多くの情報を収集・処理する必要があります。そのような記者にアプローチしたくて、いきなり大量の資料を送りつけても見てもらえません。ボイラープレートは記者へのファーストコンタクトでも役に立ちます。その内容が魅力的に映れば、さらに詳細について教えてほしいと言われる可能性が高まり、次に送るボリュームのある資料も見てもらえるでしょう。

そもそも記者がプレスリリースを見た時に、「この会社は社会にとっての存在意義があるのか?」「この案件は社会課題のソリューションになっているか?」という視点で見られます。ボイラープレートの内容から、「一体この会社は社会の何を解決しようとしているのか」を読み取ろうとするわけです。そういったものが明確になると、記者はプレスリリースの発信元が無名の会社であったとしても、企業が目指していること、実績などが記載されたボイラープレートから、「これから取材対象にしてマークすべき企業かもしれない」と思ってもらえる可能性は高くなります。

だからこそ広報力を強化したい企業は、パーパスブランディングの一貫としてボイラープレートをポジショニングして活用すべきなのです。

 

ボイラープレートの一例

以下にボイラープレートの好例をご紹介しましょう。

「スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社」

スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社は、1996年に東京・銀座に日本第1号店を開業。全世界約80のマーケットで約34,000店舗以上、日本全国47都道府県において1,792店舗 (2022年12月末時点、ライセンス店舗を含む)のコーヒーストアを展開しております。「人々の心を豊かで活力あるものにするために—ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」をミッションに掲げ、約4万人のパートナー(従業員)が、一杯のコーヒーを通じて、人と人とのつながりと心あたたまるひとときを提供しております。2019年2月28日には、世界5拠点目となる「スターバックス リザーブ®️ ロースタリー 東京」をオープンしました。全国に広がる、人・社会、地球環境、地域とつながりを育むストーリーは、「STARBUCKS STORIES JAPAN(https://stories.starbucks.co.jp/ja/)」で紹介しております。

このボイラープレートの良い点は、共感できるミッションがあり、そのミッションを達成するためにパートナーが重要であること、日本で店舗展開を拡大している様子が簡潔に伝わり、取材したくなる内容が詰まっています。


「ヒューマンライフコード株式会社」

ヒューマンライフコードは、国産かつ備蓄可能な臍帯(へその緒)(“コード”)からの細胞医薬品を製造・開発し、現在でも確立した治療のない難病患者さんへつなげ(“コード”)、その先には健康寿命延伸につながる病気の重症化予防を目的とする未来の医療へとつなげる(“コード”)ことで、誰もが心豊かな生活を実現できる社会(“ヒューマンライフ”)を創り出すことをビジョンとしています。2019年「第1回東京ベンチャー企業選手権大会」最優秀賞&東京都知事賞受賞。東京都による「スタートアップ・エコシステム 東京コンソーシアム」が運営している「ディープ・エコシステム」の2022年度の支援対象企業に選定。

こちらはAStoryがサポートしたベンチャー企業のボイラープレートです。いろんなベンチャー/スタートアップの賞を獲っている企業なので、それを盛り込み、第三者から既に評価されている企業であることをボイラープレートでアピールしています。

スタートアップやベンチャー企業は、その会社が一生懸命作ったプレスリリースであっても記者に興味を持ってリリースを読んでもらうことは至難の業です。無名であっても、社会的意義が高く実際に賞などで第三者に評価されていることが記者に伝われば取材される可能性は高くなります。

 

ボイラープレートの作り方

実際にボイラープレートに何を盛り込めば良いか分からないという方のために、弊社AStoryのボイラープレートを例にポイントをお伝えしましょう。

AStoryのボイラープレート:

AStoryは、2017年1月に「企業が社会と共創するコミュニケーションを実現する」ことをパーパスに掲げ創業しました。創業者兼代表はアマゾン、ソフトバンクなど急成長した企業で25年以上PR/ブランディングの実績を積んできました。「企業のヒジョン、ゴール、チャレンジを、中長期的にサポートすることを目的に戦略的なPRソリューションを壁打ちスタイルで提案し続けること」をミッションに掲げ、大企業からスタートアップまで100社を超える様々な業界の企業をPR戦略策定やパーパス・ブランディングの推進等を通じて各社のブランド価値向上に貢献しています。

ボイラープレートは自社の強みや魅力、目指すところを短い文章で伝えるもの。そのため盛り込む内容で最も重要なのは「パーパス」や「ミッション」、「ビジョン」と整合性がとれている内容になっていることです。

強みや説得力のあるデータを貴社のあらゆる情報から抽出してみましょう。AStoryの場合は「25年以上」PRやブランディングに携わってきたことや、「100社」を超える企業の戦略策定やパーパスブランディングを推進してきたという点です。これを記者が見た際、「この会社はコミュニケーションという分野のエキスパートが企業のブランド価値を上げる活動をしていているんだな」と認識していただけるように作成しています。

このように「数値で表すこと」、「目指している社会的意義をもっているのか」、そして「どういうサポートを行っているのか」などを、現在“会社概要”になってしまっているボイラープレートに是非加えてみてください。

 

ボイラープレート作成のポイント

  1. 必ず入れて欲しい要素

    ◼会社の歴史的なバックグラウンド
    例えば、どのような経緯で創業された会社なのか、どのような思いやストーリーがあるのかなどを簡潔にまとめてあると、初めて貴社を知る相手は理解しやすくなります。これはパーパスやミッション、ビジョン(経営理念)と組み合わせて表現しても良いと思います。

    ◼取材対象になりうるデータ
    ここで気をつけたいのは、データといっても売上というよりはミッション・ビジョンに即したものになります。
    例えばスターバックスですと、「人々の心を豊かで活力あるものにするために、ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」というミッションから、約4万人のパートナー(従業員)がいることを表現しています。
    数字は企業のビジョンやミッションで言及していることと実際の事業活動が一致していることが重要です。
    売上が「100億円に達しました」といった情報は一般社会の人たちが共感する要素ではありません。企業が努力して目指している方向に対して、共感者・共感パートナーが増えているというような、「喜んでいるステークホルダー」の姿が想像できるような数字を入れることがポイントです。

    ◼強み・こだわり(差別化要素)
    私達はこれを目指すために社員の顧客満足度を上げることを目標にしているというような教育の仕組み化など、目指している方向とシンクロしている要素があればボイラープレートに盛り込むことをおすすめします。

    ◼行動喚起(URL)
    忘れてはならないのがボイラープレートを読んだ後に、読んでもらった相手にしてもらいたいアクションへの誘導です。プレスリリースではメディアにとって「初めまして」状態の企業であれば、ボイラープレートで興味を持ってもらい、さらに知ってもらうために、貴社のサイトへ誘導するURLや連絡先は必ず盛り込みましょう。

  2. ボイラープレートの最適なボリューム
    ボイラープレートのボリュームはおおよそ300文字程度が目安です。あまり長いとプレスリリースの枚数が増えてしまい、かえってよくありません。

 

ボイラープレートの活用

ボイラープレートはプレスリリース以外にも活用できます。コンパクトに自社を説明できる定型文としてとても使い勝手が良いとお話しましたが、社員が家族や友人に説明する際にも役立ちます。自分が働いている会社の活動が複雑すぎて説明できないのは機会損失です。

そしてボイラープレートはSEO対策にもなるのでホームページに掲載するのもおすすめです。自分たちがどういうキーワードで探してもらい、ユーザーにリーチしてもらいたいかを意識して作りましょう。

ボイラープレートはその語源にあるように、1回作ったものをコロコロと変えることは基本的にありません。しかし企業のファクト情報は成長とともに更新されるため、事実に即して適宜最適化しましょう。

 

まとめ

以上のように、ボイラープレートはプレスリリースの末尾に記載される重要な要素であり、ブランディングの一貫としても大切だということがお分かりいただけたでしょうか。
ボイラープレートを作っておくと、メディアピッチをする機会があっても、メールや紙の資料を送ったところで記者は開いてくれないでしょう。このようなコンパクトにまとまったボイラープレートがあれば端的にPRでき、興味を持ってもらう突破口を開くことが可能です。

さあ皆さん、ボイラープレートの力を最大限に活かしてプレスリリースを一段上のレベルに引き上げましょう。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

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