新PR戦略のススメ〜広報もコラボレーションが問われる時代〜

 
コラボレーションをイメージした図

先日、FIBAバスケットボールワールドカップが沖縄で開催され、日本男子が見事、2024年のパリオリンピックの出場権を獲得しましたね。監督のトム・ホーバス氏は、2021年に開催された東京オリンピックで銀メダルに輝いた日本女子チームについて、「スーパースターはいないがスーパーチームだ」と評していました。
チーム力が問われるスポーツならではの監督の言葉ですが、実は会社組織においてもこれからはチームの時代といわれています。

実際広報においてもコラボレーションスキルやノウハウは有効です。
特にスタートアップ系の企業で認知度が低い企業はコラボレーション能力を高めることが追い風になるでしょう。
今回は他社とのコラボレーションによる新PR戦略について話をしたいと思います。

 
 

なぜコラボレーションが必要か

現代は個人の個性を発揮するダイバーシティ&インクルージョンの時代とされています。

年々、生産人口が減り、人材も思うように採用できなくなる時代になっていることは、特に経営やマネジメントに携わっている方々は実感されていることでしょう。
だからこそ、限られた人材リソースで最大の効果を引き出すチームワークやコラボレーションスキルが求められるのです。
そこには各々の個性を発揮して「力を合わせる」という共同・協同・協働の精神がキーファクターとなります。

そしてメディアは常に「潮流」を探しています。たった1社のベネフィットという観点ではとり上げにくくても、時事性を表すような潮流があって、その潮流のなかで素晴らしい取り組みがあれば、メディアはその会社を取材するでしょう。

その潮流は、コラボレーションすることで作ることが可能になります。

次にPR戦略においてどのようなコラボレーションがあるか事例を見ていきましょう。

 

従来のコラボレーション

例えばコロナ禍だった2021年には、「白い恋人」の石屋製菓、「萩の月」の菓匠三全、そして「博多通りもん」の明月堂という菓子メーカー3社がコラボしたプロジェクト「ニッポンのおみやげんきプロジェクト」において、共同プレスリリースを発信しています。

石屋製菓株式会社
https://www.ishiya.co.jp/news/mtfiles/news_file593.pdf

株式会社菓匠三全
https://www.sanzen.co.jp/info/img/37bd08668455763b616c1e0b6bd674d32cb84609.pdf

株式会社明月堂
http://www.meigetsudo.co.jp/news/archives/307#post-detail

このように、従来のコラボレーションの形態は商品の協同企画といった事業や同業種との連携がよく見られました。

 

新しい形のコラボレーション

弊社がサポートさせていただいている企業では、異業種企業とのコラボレーションで潮流をまとめメディアにアプローチしています。


【事例1】リバティーンズ株式会社(Liberteenz,Inc.)

リバティーンズ社はアプリ検索で上位表示させるための機能「ASO(App Store Optimization)を搭載した広告配信用クラウドを使ったSaaS(サース)の提供をしているアプリマーケティング企業です。

B2B企業であり、ASOという一般的には耳慣れないビジネスモデルである特性上、単独でPRするのは難易度の高い業界となります。
アプリマーケティングとしての対象は幅広いものの、業界自体はまだまだ成長過程なためメディアに興味を持ってもらい、社会に認知を広げていくPRは一筋縄ではいきません。

しかしながらリバティーンズ社は、共通のテーマに取り組んでいる企業と共同でChatGPTを題材にしたプレスリリース「慎重派多数から一転、活用検討する企業が増加中、ビジネスシーンに広がる生成AIの活用事例」を作り、現在、異業種4社でコラボし、メディアにアプローチしています。

この異業種のなかには、ウェブシステムを受託開発する企業やパートナー型デジタルエージェンシーといった同じIT業界のほか、オリコンもリサーチ企業として参加されています。

【事例2】株式会社ヴォレクト(VOLLECT,Inc.)

ヴォレクト社はダイレクトリクルーティングを戦略策定から実行までトータルで支援する会社です。

彼らは「エン転職」、「ミドルの転職」や「ウォンテッドリー」など、様々なスカウトサービスチャネルを使いながら企業におけるダイレクトリクルーティングの最適方法を提案・サポートしており、いわゆるダイレクトリクルーティングの戦略パートナーとしての役割を担います。

ダイレクトリクルーティング自体は人材、人事業界では徐々に認知が高まってきていますが、メディアでの掲載はまだまだ少ないのが現状です。

そこでヴォレクト社では、多様な人材が活躍する組織の強みを生かして「ワーママ」というテーマの記事をリレー形式で発信する協同プロジェクトに参加しています。
様々な業界のワーキングマザーの挑戦を紹介した「#ワーママの挑戦と私が描く未来地図」という記事を各社が発信する企画です。

ワークライフバランスを保ちながら仕事に取り組んでいる姿、働くお母さんという切り口で、現代のワーキングウーマンの潮流をすくいとった企画は業界問わず横断的に共通するテーマであり、社会にとっても非常に興味深いものではないでしょうか。

このように異業種が1つのテーマでメディアに働きかける共同プロジェクトは今後PRの一手法として注目されることでしょう。

メディアにとっても重宝しそうなアプローチ方法ですので、是非チャレンジすべきだと思います。

 

コラボPRのメリット

  1. 潮流(トレンド)として発信・トレンドを作ることが可能

    コラボレーションすることで世の中の「トレンド」としてアピールすることができます。メディアは前述したように、常にトレンドを探しているので、メディアにとっても企業にとっても、お互いの需要と供給がベストな形でマッチするのです。

  2. 発信先の拡大

    異業種間で取り組んだ場合、自社が日頃お付き合いしているメディア以外にも、知ってもらうことが可能になります。特にB2Bでは、B2C向けにビジネスをしている会社からも発信してもらえる可能性があり、新たな層の間で認知度を上げる意味でメリットは高いでしょう。

  3. 信頼度up

    コラボレーションする企業のなかに既に社会の信頼を得ている有名企業があれば、信頼あるブランドと協業しているという見え方が、信用力を上げることに繋がります。

  4. 新しいターゲット層へのアクセス

    これまで自社を知らないという人が知ってくれる可能性があり、且つ、そこに顧客開拓という可能性や人材採用の機会にも繋がる可能性が広がるでしょう。

 

コラボPRのアプローチ方法

では、どうすればコラボレーションPRができるのでしょうか?異業種へのアプローチ方法について紹介していきます。

【アプローチ方法その1】

コミュニティへの参加


現代はソーシャルが発達してコミュニティが活発になっている時代です。私自身も様々な広報のコミュニティに属していますが、そういったコミュニティで情報交換しながら、できることを模索することが結果的にコラボレーションへの早道となります。

【アプローチ方法その2】

共通課題を持つ会社に自ら提案


自社に関わる業界の情報のみならず、様々な記事を見て、自分たちと同じような考え方や共通の課題をもっている会社があれば、積極的にアプローチしてください。

たとえ異業種であっても同じテーマをもつ会社であれば、「一緒にプレス資料を作ってメディアに仕掛けてみませんか?」というアプローチは有効だと思います。

また、スタートアップが大手企業を巻き込んでコラボレーションするのは抵抗があるかもしれませんが、例えば地域創生など社会的課題解決型のテーマで自分たちの方が新しく、他社より進んでいる場合は、大手企業へのアプローチも大いにアリだと思います。

あくまでも、「メディア側のニーズに応えていく」ということを忘れずに、最大限活用していきましょう。


そして、異業種だけでなく業界内でも繋がっておくことは特にリスク管理において重要です。業界内で連携していれば、業界特有のリスク発生時に情報収集や適時の判断がしやすくなります。

さらに、地域の連携も大切です。地方のコミュニティやスタートアップ同士の連携など、共通の課題から連携の可能性を探り、新しいPR戦略にチャレンジしていきましょう。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

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