グローバルブランドランキング上位のパーパス実践企業

 

グローバルブランドの価値を評価するインターブランドが2022 年のベストグローバルブランド100を発表しました。上位はAppleやAmazon、日本からはトヨタなど、毎回おなじみの企業がランキングされています。

Best Global Brands
https://interbrand.com/best-global-brands/

私がこのランキングで注目したのは34位のAllianz(アリアンツ)。保険会社の中ではトップの順位でした。このアリアンツの公式サイトで発信されているメッセージは、パーパス・ブランディングの観点からみても、とても素晴らしいものがあります。今回はアリアンツのコミュニケーションについて取り上げ、パーパス経営(*1)を実践しようとしている企業の皆様にご紹介したいと思います。

*1:パーパスについてはこちらの記事をご覧ください
パーパスブランディングとは?今、企業存続に必要な理由

 
 

アリアンツとは

日本ではあまり知られていないかもしれませんが、アリアンツ(allianz.com)はドイツに本社を置く世界有数の保険会社です。

サイトを見てみると、アリアンツは「We secure your future(直訳:私たちはあなたの未来を守る)」というパーパス(*2)を打ち出していました。国内における同種の企業サイトとは打ち出しているメッセージに違いがあると感じられるのではないでしょうか。

更に具体的な説明には、「1890年以来、私たちアリアンツは世界中で人々の生活を守り、お客さまに未来への勇気を与えるために努力してきました。 私たちは、アクチュアリー(保険計理人)であり、アドバイザーでもあり、さらにはサービスエージェント、エンジニア、弁護士、テクノロジーの専門家でもあり、娘や息子、母親や父親、会計士、投資家、起業家であり、共にこの業界を形成しています。私たちは確かで持続可能なソリューションを提供する、公正なパートナーの存在がいかに重要かを知っているからこそ、日々情熱を持って、正しい行動をとるよう努力しています。」とあります。

*2:アリアンツのPurpose
https://www.allianz.com/en/about-us/strategy-values/our-purpose.html

アリアンツの公式サイトは自分たちの保険商品やサービスではなく、「社会課題視点」の切り口になっているのが特徴です。例えばトップページで先ず目に飛び込んでくるニュースリリースには「Deluge-ional(洪水対策)」とあり(*3)、年々、世界中で異常気象が常態化し、洪水被害がますます深刻になっているなか、専門家の意見を踏まえた今後の発生リスクや、人命や財産を守るための保険会社としての役割とレジリエントな社会にするための提言といったメッセージが込められていました。

*3:2月6日時点のヘッドライン。2月7日からはトルコとシリアの地震救援についてのニュースリリースになっています
https://www.allianz.com/en/press/news/business/insurance/230130_Allianz-Deluge-ional-Time-for-smarter-collaboration-against-rising-flood-risks.html#tabpar_7516_2Tab

アリアンツの公式サイトは一見すると「The・保険会社」というサイトに見えません。
また、サイトトップのすぐ下に固定表示されているメッセージには、現在ウクライナへの軍事侵攻を行っているロシアでの事業を行わないことも表明しています。

このように、いわゆる人道的な視点で未来を守るために何をすべきかといったことなどを意識的に発信しているのがわかります。
このようなコンテンツは日本のパーパスを掲げている企業にとっても良い例になるはずです。

 

パーパス経営者の姿勢

パーパス経営においてキーパーソンである社長の姿勢はどうでしょうか。

アリアンツのCEOであるオリバー・ベイト(Oliver Bäte)氏はメディアのインタビュー記事のなかで、ときに厳しい質問にも真摯に応えています。
ベイト氏の言葉(*4)からは自社がどのようにパーパスを実現しているかや、従業員のエンゲージメントを大事にしていることがうかがえます。

*4:「企業は売上や利益だけの話ではなく、お客様の満足度や従業員のエンゲージメントを含めた会社全体の健全性が問われている」(It’s no longer just a matter of sales and profit, but the health of the company as a whole, which also includes our customers’ satisfaction and our employees’ engagement.)
https://www.allianz.com/en/press/news/business/insurance/221214_Allianz-Focus-interview-Trust-has-become-our-primary-currency.html

ベイト氏はドイツのダイバーシティを実践している企業と人を表彰する「German Diversity Award」においても、多様性・公平性・包括性 (DE&I)を象徴する人として評価されています(*5)。

*5:「PERSONALITY OF THE YEAR, Oliver Bäte, CEO, Allianz SE」
https://beyondgenderagenda.com/en/german-diversity-award/#german-diversity-award

会社の代表であるベイト氏の姿勢からも、アリアンツのパーパスである「We secure your future」のために、先ず従業員のエンゲージメントが大事であることが伝わりますし、公式サイトのコンテンツからは、先に紹介したニュースリリースのように将来にいかに備えていくかという、みんなで考えるようなテーマを打ち出して、それをどんどん発信していくことを重要視していることがわかります。

ここまでパーパスを徹底しているからこそ、消費者側から企業を見たとき、この企業のパーパスに真実味を感じ取れるのです。

 

アリアンツがパーパス経営としてお手本になる理由

いわゆるGAFAMのようにブランドランキングのトップに入るような企業も、パーパス経営やパーパスブランディングをやっていますが、自社のオウンドメディアからパーパスをコアとして、しっかり自社の経営姿勢に組み込んでいると感じられるという点において、アリアンツは卓越しています。

ベストグローバルブランド100にランキングされる企業のように、パーパス経営が成功する経営者(陣)の特徴として、インタビューの受け答えが常にステークホルダー視点であることが挙げられます。
自社が主役ではなく、自分たちが主語というよりは、常にお客様視点でコミュニケーションをしているのです。

私が常々「パーパスは第三人称」だと主張しているように、評価される企業には「自分たちが成し遂げる」ではなく、「皆さんと一緒に自社の存在意義を理解してもらい、共感してもらいながら、自分たちのパーパスを全うしていく」という姿勢が大事なのです。
アリアンツにはその姿勢がよく表れています。

 

43位にランクインしたAXAとの比較

同じくベストグローバルブランド100の43位にランクインしたAXA(アクサ)も保険会社です。
このアクサの公式サイトでも、パーパスは明確に宣言されています。

「大切なものを守ることで、人類の進歩のために行動すること」
https://www.axa.com/en/about-us/our-purpose

アクサも保険会社としてきちんと社会環境や経済についてコミットしたメッセージや、女性リーダーが当然のように、ダイバーシティ時代に自然に存在している点は日本の保険会社だけでなく、あらゆる企業が参考になるのではないかと思います。
そしてアクサもアリアンツと同様、サステナビリティを意識していることがサイトのコンテンツからうかがえます。

商品やサービスを開発するのはより良い社会にするためには当然のことながら、「その後」のことを考えるのは、将来を破壊する開発ではなく、持続可能な社会作りが叫ばれる今の時代において非常に重要です。
しかしながら言うは易しで、「サステナビリティ」といろんな企業が謳ってはいても、従業員全員での実践ができている企業はまだ少ないようです。皆さんの会社ではいかがでしょうか。

会社として本気で取り組むのであれば、社会の人々と連携していくことが肝要です。

企業の公式サイトに全ての解決策が載っているわけではありませんが、「(ある社会問題に対して)自社だからこそできる未来の予想や分析」を、消費者をはじめとしたステークホルダーとシェアしていくことで、みんなが考えるきっかけになります。そしてそれを考えた次に何ができるか?というプロセスに繋がるのです。

 

パーパスを実践するための秘訣

アリアンツやアクサに共通しているのは、自社だけで解決する問題にせず、社外の様々な人々と社会課題を共有し、意識を整えていくというオウンドメディアになっている点です。
両社のコミュニケーションに触れた人々は、「この会社は本当に未来を守るために真剣に取り組んでいるんだ」という共感や信頼感を抱くことでしょう。

以前投稿した記事(*6)では、消費者意識に変化が生じているという調査結果をご紹介しましたが、現代は信頼できる会社やブランドの商品やサービスを選ぶ時代です。

*6:「消費者の意識が変化」
https://www.astorypr.com/news-all/now-is-the-time-for-media-training#title1-2

「信頼」とは言っていることとやっていることがイコールであること。企業のオウンドメディアなどのコミュニケーションと実際の事業活動から受け止められる印象がブレていないことです。
ユーザーが企業のあらゆるチャネルを通して、「本当にこの会社は真摯にパーパスを成し遂げようとしているのだな」と感じ取れることが大事なのです。
先ずはオウンドメディアからそれを感じられないと、消費者はその会社のことを知る由もありません。

パーパス経営を実践するためには「パーパスとは一体何なのか?」という組み立てから始めることが重要です。
オウンドメディアだけを体裁よくすればいいのではなく、パーパスブランディングのための戦略をつくりながら、その一つとしてオウンドメディアを活用することが秘訣です。

「パーパス経営は何から手をつければいいのかわからない」といったことや、パーパス・ブランディングの戦略作りで壁に当たっているといったお悩みがあればお気軽にお問合せください。

 

AStoryではアマゾンジャパンの黎明期からトヨタやGoogleを抜いてトップブランドとなった実績(「総合ランキングは、「Amazon.co.jp」が初の総合首位を獲得」)をもとに、ベンチャー、スタートアップ企業の新規上場におけるPR戦略立案やPR担当者育成のサポート、パーパスブランディングの構築支援をしています。

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