AIで広報の仕事はどう変わる?新人広報に求められる5つのスキル
こんにちは。パーパス・ブランディング・コンサルタントの小西です。
広報の分野でも、AIの登場で新人のPRパーソンの業務の多くが自動化されてきています。アメリカのPR会社の調査によると、すでに約90%のPR担当者が生成AIを業務に活用しているそうです。
用途としては、アイデア出しが73%、文章作成が68%、AIを活用したメディアモニタリングは40%、そして約3分の1がAI搭載のレポートツールを利用しているという結果になっています(*1)。
つまり、これまで新人広報の“仕事の入口”だった業務の多くが、すでにAIに置き換わり始めているということです。
ここで多くの企業が抱く不安は、「では新人は何をやればいいのか?」という問いでしょう。
しかし私は、「新人の広報業務は減るのではなく、役割が完全に変わる」と思っています。
そこで今回は、
「AI時代に、新人広報は何を担うべきか?」についてお話したいと思います。
AIは“仕事を奪う存在”ではない
日経MJの永井編集長が「AIは電卓と同じだ」と語っていました。
私はこの表現がとても的確だと思っています。
かつて電卓が登場したとき、「計算ができる人材の価値は下がる」といわれました。実際にはどうだったでしょうか。
単純計算の価値は下がり、“何を計算すべきかを考える力”の価値が上がったのです。
AIもまったく同じことがいえます。
文章を書くこと自体の価値は下がっても、「何を伝えるべきか」「どういう文脈で届けるべきか」を設計できる人材の価値は、AIにはできない人間の役割として、むしろ上がっていくのではないかと思っています。
つまり、AIは敵ではありません。
広報の“本質”をあぶり出す装置なのです。
新人広報に求められる「5つの力」
では、これからの新人広報・PRパーソンに何を求めるべきか。
私は、次の5つに集約されると考えています。
① AIディレクション力
AIディレクション力とは、AIに「何をさせるか」を設計する力です。プロンプトを書く技術も含まれますが、本質はそこではありません。
重要なのは、アウトプットのゴールを定義できるかどうかです。
・誰に
・何を
・どう伝えたいのか
これが曖昧なままでは、AIは“それっぽいけど刺さらない回答”しか出さないでしょう。新人に求められるのは「書く力」ではなく、“AIに書かせる設計力”です。そしてこの力は、ゆくゆく、自分が部下にディレクションするスキルにも繋がります。
② ストーリー構築力(ストーリーテリングスキル)
AIは情報を整理することは得意ですが、「意味のある物語」をつくることは苦手です。
企業の発信において重要なのは、単なる情報ではなく、
“なぜそれを伝えるのか”という文脈です。
・なぜこの事業をやっているのか
・なぜ今この発信をするのか
・それは社会とどうつながるのか
このストーリーを設計できる人材は、AI時代でも代替されません。
特に、自社のパーパス、ミッション、ビジョン、バリューといった理念から逆算した、親和性のあるストーリーをつくる力は、センスというより訓練で向上できます。
③ メディアと社会動向の文脈理解
広報は「情報を出す仕事」ではなく、“社会の中で意味を持たせる仕事”です。
そのためには、メディアの特性や社会の空気感を読む力が不可欠になります。
同じ情報でも、
・どのメディアに出すか
・どのタイミングで出すか
・どんな切り口にするか
これによって、価値は大きく変わります。
AIは過去データを集めて予測することはできますが、“今の空気”を読むことはできません。
その情報が「なぜ自社の追い風になるか」を、最終的に”文脈”を理解して、それを価値にしていくのは人間の力に拠る部分が大きいのです。ここに人間の役割があります。
そしてこの力は、実はとても地道なトレーニングの積み重ねで養われます。
私自身、新人時代には、ひたすらメディアのニュースクリッピングを行っていました。早朝から何十社もの新聞を読み、ビジネス誌が届けば隅々まで目を通し、どのようなニュースがどの紙面のどの位置にどれぐらいの大きさで掲載されるのか、今メディアが注目しているテーマは何か、業界の新たな動き、自社に影響を及ぼしそうな外部環境要素など様々な視点で記事を切り抜いて部内のディスカッションに役立てる。そんな日々です。
今であれば、こうした作業はAIやツールで効率化できます。だからこそ、「もうやらなくていい」と考える人も多いかもしれません。
ただ、私はそれを少しもったいないと感じています。
なぜなら、メディアの方と会話をすると、
「この記事はどの面に掲載されていたのか」
「どの位置に載っていたのか」
といった視点が非常に重要になるからです。
そうした情報を踏まえることで、「こういう内容は、この扱いになるのか」という“ニュースバリューの感覚”が身についていきます。
これは単なる情報収集ではなく、広報としての判断軸を育てるトレーニングにもなります。
もちろん、すべてを人力でやる必要はありません。
ただし、自社にとって本当に重要なステークホルダーが読んでいる媒体については、今の時代でも自分の目でしっかりと読み込むこと。
そして、
「どんな情報が、どんな扱いを受けているのか」
を観察し続けること。
この習慣は、確実に広報としてのスキルを底上げするでしょう。
AI時代だからこそ、“自分の目で見る”という行為の価値は、むしろ上がっているのかもしれません。
④ データ分析と意思決定力
AIによって、データは以前よりも簡単に取得・可視化できるようになりました。
しかし、「だから何をするのか」を決めるのは人間です。
AIは責任をとってくれません。最終的には人間がリスクを加味しながら、とるべき決定を判断していく力を身につけることが大事になります。
つまり、AIの回答結果をいかに読み解いて、自社の意思決定に繋げていけるかが重要になるのです。
例えば、
・この数字は良いのか悪いのか
・なぜこうなったのか
・次に何をすべきか
新人であっても、ここに踏み込むことが求められるでしょう。
単なるレポーティングではなく、“意思決定に関わる視点”を持てるかどうかが重要です。
⑤ ステークホルダーとの関係構築
そして最後に、最も重要なのがこれです。
広報は、
・社員
・メディア
・株主
・顧客
・取引先
・社会
あらゆるステークホルダーとの関係性の上に成り立っています。
人間と人間の関係構築は、AIにはできない領域です。
信頼関係はAIでは築けません。人が人として向き合うことでしか生まれません。
だからこそ、AI時代において最も価値が上がるのは、“人との関係をつくる力”なのです。
「意味をつくる人」が生き残る
ここまで読んでいただいた読者の方には分かると思いますが、AIによって消えるのは「仕事」ではなく、“役割の前提”です。
・調べる
・まとめる
・書く
これらはAIが担う領域になります。
その代わりに人間に求められるのは、
・意味をつくる
・文脈を設計する
・関係を築く
という仕事です。
私はこれを、「バリューチェンジャー」へのシフトだと捉えています。
新人教育は、今こそ見直すべき
もし今、新人広報を育てている立場であれば、育成の軸を見直すタイミングに来ています。
これまでのように、「まずはリリースを書けるようにする」では不十分です。
それよりも、
・なぜこのリリースを書くのか
・誰にどう届くのか
・どんな反応を生むべきか
こうした問いを考えさせることの方が、はるかに重要です。
AIはどんどん進化します。
しかし、意味を考える力は、人にしか育てられません。
PRは「意味」をつくる仕事
AIの普及は、広報にとって危機ではありません。
むしろ、本質的な価値が浮き彫りになるチャンスです。
単純作業の価値は下がります。
しかし、意味をつくる力の価値は確実に上がる。
この変化を恐れるのではなく、どう活かすか。
それを考えられる組織だけが、これからの広報で成果を出していくのだと思います。
パーパス・ブランディングの観点から見ても、PRは単なる露出獲得ではありません。
AStoryでは、企業のパーパスを起点に、ブランドストーリーの設計からPR戦略、コミュニケーション設計までを一体で支援しています。
ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
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小西 みさを
AStory合同会社代表/パーパス・ブランディング・コンサルタント。全省庁統一資格有資格者。
企業広報・ブランドコミュニケーション領域において30年以上の実務経験を持つ。
Amazon広報本部長として日本市場におけるブランド戦略統括や、ソフトバンク、セガなど上場企業での広報・海外広報経験を経て独立。MBA(英ウェールズ大)修了、Oxford Executive Leadership Programme修了。株式会社NJS社外取締役、ヒューマンライフコード株式会社社外取締役、BS朝日放送番組審議委員、社内報アワード審査員。
【主な講演実績】
新経済連盟 / Startup Hub Tokyo(東京都主催)/岡山県/静岡県/徳島県/香川県/沖縄経営者協会/コクヨ/静岡銀行 / コニカミノルタ / 三菱UFJ/阪急阪神ホールディングス / 経営合理化協会/京都広報懇話会懇話、マーケティングセールスワールド/第一生命HD/東京海上 ほか多数。筆者の実績については下記をご覧ください。https://www.astorypr.com/company-overview
AStoryでは、アマゾンジャパンの黎明期から戦略的広報でブランド価値向上に貢献し、2015年には日経BP社「ブランド・ジャパン」調査においてブランド価値ランキング総合1位を獲得するまでのプロセスをリードしてきた代表小西の知見をもとに、パーパス・ブランディングの構築からPR戦略立案、広報人材の育成まで一貫してご支援しています。
AI時代において、「何を伝えるべきか」「どのように意味を設計するか」に悩まれている企業様も少なくありません。もし、自社の広報の役割や育成のあり方を見直したいとお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。